ビジュアルポイやファイアーポイ等、光の軌跡を操るパフォーマンスは暗い状況下で使用されることが多く、またポイ自身は非常に明るく発光するため撮影が難しい被写体です。

ポイラボではこれまでに多くの実験を重ね、ポイを美しく撮るためのノウハウを得てきました。以下に基本的な機材の選び方、撮影の流れを紹介します。

動画用カメラの選びかた

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ポイント


マニュアル設定可能かつ、センサーサイズが大きいビデオカメラ。
一眼レフの場合は Nikon か FUJIFILM がお勧め。

必須最低条件として、シャッター速度調整が可能なカメラであることが挙げられます。

ポイは暗い条件下で明るく発光するので、ダイナミッックレンジに余裕のあるセンサーサイズが大きめのカメラが推奨されます。

その中でより正しく撮影できるカメラをご紹介します。

カメラ種類 特徴
業務用ビデオカメラ、シネマカメラ 撮影可能です。
一眼レフカメラ

撮影可:Nikon, FUJIFILM

Nikon Z6をYuta, Takuは使用していますが、Z5, Z50などでも問題なく撮影できます。


撮影不可:SONY, CANON, PANASONIC

一見すると正しく撮れているように見えますが、フレーム間にギャップが発生します。1/30とかかれていても実際は1/33などになっており、仕様上制限されているため正しく撮影できない場合が多いです。

CANONは有志の拡張ファームウェアMagic Lanternを使用すれば可能な機種もあります。Panasonic、SONYのαシリーズ等も総合的には非常に美しく撮れますが動画ではポイの軌跡にはフレーム間に修復不可能な線が入ります。

なお、Canonは静止画撮影時の問題点(ワイヤレスストロボであと幕撮影ができない)もあるたためYutaはCanonからNikonへ2019年に乗り換えました。※2021年以降の機種では後幕が可能になったという話も聞きますが詳細不明です。

一般向けビデオカメラ

シャッター速度を設定できれば可能です。ソニー FDR-AX700は万能でお勧め。1世代前のSONY AX100も2015年の購入からかなり経ちますが今でも現役で活躍しています。

GoPro, iPhone, Insta360 ONE X2

GoProInsta360 ONE X2、 はシャッター速度を正しく設定すれば撮影できます。GoProはMaxレンズを使えば狭い室内でも全て納めることができるため、リハーサル現場などで重宝しています。iPhoneもシャッター速度設定を行える有料カメラアプリを使用すれば撮ることができます。

カメラの設定

ポイント


フレームレートとシャッター速度を揃える。

フレームレートとシャッター速度を揃えて、光の軌跡の取りこぼしが無いようにします。一般的な撮影ではゆるく感じるシャッター速度ですが、既定のシャッター速度より早くするとポイの軌跡がパラパラしてしまいます。

逆にスローシャッターにすると人物がぼやけるため、基本的にはフレームレートとシャッター速度を合わせるのがお勧めです。

フレームレート シャッター速度 露出補正 (AEシフト)
30P おすすめ 1/30 -2 ~ -1
60P 1/60 -2 ~ -1
60i 1/60 -2 ~ -1

最終的に納品するフレームレートで撮影しましょう。60Pで撮影し、30Pでエンコードする場合にフレーム間の欠損が生じます。スローモーションなどの特殊な用途で使用する前提でないものは最終的な納品時のフレームレートで統一する法が無難です。

照明設定

ポイント


ポイの軌跡に合わせたカメラ設定を作ったうえで演者が綺麗に見える照明を組む。順番が逆だとポイが白飛びします。

一般的な条件下では、肉眼だと明るすぎると感じるくらいが適正値になります。

光を使用するパフォーマンスは暗転状態でやるのが美しいと思いがちです。しかし、暗い状況下でポイは強烈に発光するため白飛びしやすく、ポイで表現している軌跡が映像では意味をなさなくなります。

白飛びを抑えるためにカメラの露出を絞っていくと人物は真っ暗になってしまいます。
そのためビジュアルポイを使用する場合は適度に照明を当てる必要があります。

条件 概要
#1 30P, 1/100, auto | 照明普通 軌跡がパラパラする
#2 30P, 1/30, auto | 照明普通 軌跡はつながって見えるが、白飛びする。背景条件によっては人物も白飛びする。
#3 30P, 1/30, EV -2 | 照明普通 軌跡はつながり、色も綺麗に表現できている。人物が暗くなる。
#4 30P, 1/30, EV -2 | 照明ほぼ暗転 軌跡はつながり、色も綺麗に表現できている。人物は全く見ない。
#5 30P, 1/30, EV -2 | 照明明るめ 軌跡はつながり、色も綺麗に表現できている。人物も見えている。肉眼で見ると少し明るく感じるレベルになるがカメラでは適正露出になる。
#6 30P, 1/30, EV -2 | 照明明るめ(色付き) 軌跡はつながり、色も綺麗に表現できている。人物も見えている。照明にカラーが入ることで生々しい感じが減る。青を入れると暗い雰囲気がでる。照明さんの腕の見せ所です。

照明と同様に重要なのが背景です。ポイ演者の背景が白だったり、LEDスクリーンがあったりすると軌跡が綺麗に見えません。

LEDスクリーンがある場合はオフにするか暗めの映像を流すなど、ポイの光を飲み込まないような設定にしましょう

ライブ収録や配信時の設定

ポイント


ポイ担当カメラを決め、スイッチング担当と事前の情報共有を丁寧に行う。

セクションが多い場合は演出を統括するトップにまずは特殊性を理解させる。

通常の設定は1/100前後のシャッター速度で統一されていると思いますが、ポイはそれと比べるとシャッター速度が遅く特殊な設定です。

瞬時に設定を変更することが難しい場合は、ポイ専用カメラを事前に指定しておき、ポイのパフォーマンスが始まる前に設定を合わせておき、ポイ専用カメラにスイッチングするように事前に担当各所で情報を共有しましょう。

特にテレビの特番などは、さまざまなセクションが入り乱れ、ポイの特殊性が理解されないまま残念な結果になることがおおぢです。トップの人にポイ撮影の特殊性、カメラ・照明の設定手順を理解してもらうのが先決です。

カメラ設定とスイッチングの例

注意


小規模配信イベントの場合は使用する配信サービス、ネット環境によってはフレームレートが変わるので要注意です。
またATEM mimiなどの個人向けスイッチャーを使用される場合もフレームレート設定の確認が必要です。

シーン カメラグループA ノーマル カメラグループB ポイ用 スイッチャー
M1: 通常シーン 通常設定 通常設定 グループA・グループB
M2: 通常シーン
(ポイ演出1曲前)
通常設定 ポイ設定に 変更する準備 グループAのみ
M3: ポイシーン 通常設定 ポイ設定 グループBをメイン
M4: 通常シーン 通常設定 通常設定に戻す グループA・グループB

その他の特殊撮影技法

フォトブース

ポイを使用した軌跡の写真。記念撮影やアート作品として、クリエイティブな写真が撮れます。

ポイの軌跡の映像表現

映像でとらえた軌跡を拡張し、写真のようにポイの軌跡を映像に残す特殊技法。

ライトウェーブエフェクト

ポイをスーパースローカメラで撮影し、1点滅ごとの軌跡を拡張させる表現

お勧めのカメラ

ポイント


写真撮影も動画撮影も行いたい!というかたは Nikon or FUJIFILM。レンズ資産やストロボ資産を共有できるという利点があるので、自分の周りでユーザーが多いほうのカメラを選びましょう。

シネマカメラでは Sony ILME-FX6V, Blackmagic Design Cinema Cameraなどは非常に美しく撮影できます。

名称 センサーサイズ
参考ページ
画質 備考

Nikon ミラーレス一眼カメラ Z6
35mmフルサイズ
35.9×23.9mmサイズCMOSセンサー
★★★★★ フルサイズで色の表現、質感、解像感も素晴らしい。プロ向けとしてはRAW動画撮影も可能だが、通常は扱いやすい動画フォーマットで撮影可能で一般ユーザーでも編集しやすい。2021年現在ポイラボで使用する最高のカメラの一つ。スチルカメラとしても秀逸でストロボはワイヤレス後幕に対応。写真も完璧にとれる万能カメラ。
後継機種:Z6II / 高画素機種:Z7II

Nikon ミラーレス一眼カメラ Z50
APS-C 23.5×15.7mmサイズCMOSセンサー ★★★★ ほぼz6と同等の画質。サイズが小さい分、ダイナミックレンジの狭さは感じる。動画だけではなく写真もとれる万能カメラ。

SONY FDR-AX700
1.0型 Exmor RS CMOSセンサー ★★★★ 家庭用ビデオカメラとして最高峰のカメラの一つ。プロ向けの映像設定もできるほど細かな設定が可能なので、ポイも問題なくとれる。AFも秀逸、ズームも便利、超万能カメラ。価格は高い。

GoPro Hero9
1/2.3インチ ★★★ アクションカメラとして有名なGoPro、実はポイの軌跡もちゃんと撮れる。センサーサイズが小さいため色つぶれはあるが記録用として十分。その他のアクションカムとしての基本性能が素晴らしいので普段使いにも良いカメラ。

iPhone
  ★★★ 有料アプリが必要だがきちんととれる。センサーサイズは非公表だが、一般のビデオカメラ・一眼レフカメラと比べると小さいため色つぶれは起こる。また簡単に三脚に取り付けることもできないため、長時間の撮影には不向き。